【合格体験記】国立理系大学院入試に挑むにはどのような対策・戦略が必要なのか

雑記

大学院入試(ここでは修士課程進学を指します)は大学入試に比べ極めて限られた情報のもとで受験に挑む必要があります。

大学入試のように予備校や学校での進路指導もありません。

一般入試では倍率も大学入試ほどではないですが高校入試よりも高い(2~3倍)となることが多く,それなりの確率で落ちてしまいます。

ここでは@miyaki_miyagiが国立理系大学院(機械系専攻)を一般受験した経験からなるべく一般論として大学院の一般受験にあたって考えた戦略をまとめたいと思います。

大学院入試について

まず、世間では大学院入試とはどのような存在なのでしょうか。

厚生労働省 https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2017/07/24/1386653_05.pdf

少し古いデータではありますが,上図からわかるように学部進学率は18歳人口の50%にに達している一方、大学院に進学する人間はわずか5%強に過ぎません

これだけを見ると大学院進学はかなりマイナーな選択肢に思えます。

厚生労働省 https://www.mext.go.jp/content/1423020_012.pdf

しかし、専攻別データを見てみると理工学系分野では4割程度が大学院に進学している実態があり,専攻分野によって大きな隔たりがあります。

また、こちらも古いデータではありますが、大学院進学率は大学によって極めて大きな差があり、傾向としては「いわゆる上位校」、「私立より国立」、「理学部より工学部」で進学率が高くなる傾向が見られます。(進学しても就職に困らない学部・家庭の金銭的余裕といった理由でしょうか)

これらの傾向から分かる通り、大学院進学は世間からみるとマイナーな選択だが、属する環境(大学)によっては当たり前の選択である場合があります。

当然得られる情報も周囲に大学院進学者が多い場合は多くなり、優位に入試をすすめられるかもしれません。

逆に、そうでない場合(外部からの受験・専攻外の受験)ではどうにかして情報収集を行う必要があります。

受験戦略について

まず先に結論から述べると、私は以下の事項を検討した結果、内部受験のみで併願をしないこととしました。

大学院入試は高校・大学(学部)入試とは極めて大きな違いがあります。

それは「受験対策に当てられる時間が短い」,「大学によって出題科目・内容が多様である」という点です。

①は卒業所要単位の取得と卒業研究を並行して行う必要があるという理由が大きいですが、基本的にだれでも条件は一緒です。

しかし、②は外部受験・専攻外受験・併願である場合内部受験で条件が大きく異なります。

以下にいくつかの国立大学の機械系専攻の受験科目をまとめました(○は選択科目,◎は必須科目)。

大学名専攻名外国語数学(一般)力学機械力学材料力学制御工学流体力学熱力学生産加工・機械工作面接備考
北海道大学機械・宇宙航空工学系研究室群外部試験
横浜国立大学機械・材料・海洋系工学専攻外部試験2科目選択
名古屋工業大学機械工学専攻専攻外部試験 
大阪大学機械工学専攻外部試験2科目選択
九州工業大学機械工学コース外部試験

表から分かる通り、すべての大学で英語の外部試験と面接を課す一方、筆記試験の科目はばらつきがあり,必須・選択も様々です。

さらにたとえ科目が同じでも、内容を見ると出題傾向・範囲が大きく異なることが多いです。

このことから併願を増やせば増やすほど勉強しなくてはならない範囲が増加し,第一志望の合格率が下がってしまう恐れがあります。

もちろん、第一志望の大学院の勉強のみで傾向の近い併願先を受験することも戦略として考えられます。

ただ、私はそもそも第一志望の滑り止めとして併願をするのに,第一志望に落ちる状況で無対策の併願先に受かるわけがないと考え、併願をやめて内部受験一本に賭けることとしました。

一方、そうは決めたとはいえ、併願なしで落ちたら終わりというのは精神的にかなり厳しい面もあったのは事実です。

精神的な安定を得る&経験を積むために併願をするのもアリではあると思います。

学習日程について

大学院の日程は大学によって様々ですが、私は概ね上図のような日程で試験に臨みました。

これは内部での受験なので外部入試なら専門科目(英語以外の科目)の学習開始を一ヶ月前倒したほうが安心でしょう。(実際、外部入試の研究室の先輩は4月から専門科目の勉強を始めたそうです)

概ね3年生の期末試験終了とともに英語の勉強を開始し、英語試験(TOEIC)を3回受験

TOEICの勉強中はそちらに集中しており、ほかの勉強は一切していませんでした。(今思うと反省です)

TOEICの試験で満足のいける点が取れた時点で、試験まで残りおよそ2ヶ月半(10週間程度)でしたが、ここに至って過去問を見てみると解けるどころか設問の意味も全くわかりません

これはまずいと非常に危機感を覚え、おおよそ4週間で基礎の復習(教科書や参考書の演習問題)を徹底。

その後、残り6週間はほとんど全て過去問対策に充てました。

過去問対策について

  • 過去問の入手

大学院入試で合否を分けるのは何よりも過去問対策です。

上でも述べた通り、大学院入試は大学ごとの出題傾向の差が極めて大きく、過去問でどれだけ対策できたかが極めて重要です。

大学院入試には赤本は存在しません。過去問は大学で公開している数年分、かつ答えなしという所がほとんどです。

内部入試の人はサークルや研究室の先輩から、外部入試の人は研究室訪問等でなんとしてでも追加の過去問を入手してください。解答を記録したノートなど貰えるとなお良いです。

私は最終的に公開の過去問3年分+先輩から5年分と解答ノートを手に入れ、徹底的に対策をおこないました。

何度も言いますが過去問が大学院入試の命綱です。

恥を忍んで(合法的な範囲で)なりふり構わず過去問を探しましょう。

  • 過去問の解答

大学院の過去問はまず公式の解答はありません。そのため有効な使い方を考えて使う必要があります。

私の場合は先輩の解答ノート友人の解答との突き合わせwolfram alpha、などでどうにか答え合わせをしました。

ただ、それでも完全な答えを得るのは難しいと思いますが、それほど心配する必要はないかもしれません。

(私の見聞きした範囲ですが)大抵の大学院入試は記述方式で、答えに至るまでの過程を重視しているようです。

基礎的な知識を持ち、解答に至ろうとする試行錯誤を記述すれば満点は無理でも部分点がもらえるはずです。

  • 過去問の勉強方法

正直に言って最初は全くわからず教科書をチラ見しながら1年分の1科目を一日かけて解いていました。

初見で一回解く⇒教科書をチラ見しながら分からない所を埋める⇒答え合わせと言った具合です。

やがて次第に慣れていき、最終的には、実際の時間で解く⇒時間無制限で解く⇒答えや教科書を見ながら完全な解答を作成といった流れにおちつきました。

最後に

大学院一般入試は落ちたら無職一直線というプレッシャーが常につきまとい極めてストレスがかかります。

試験が終わっても合格発表までは気が気でないと思います。

しかし、これは私の所感ですが、大学院入試は大学(学部)入試と違い、学生をふるい落とす試験ではなく、大学院での研究遂行が可能な基礎知識を持つかどうかを判別しているように思えます。

学部での勉強を思い出し、復習し、過去問対策をすれば必ず合格出来るはずです。

あなたの全てを答案にぶつけて採点者にアピールをしましょう!

最後に私が大学院入試で使用した問題集を紹介します。

大学院入試向けの本は非常に限られていますが、図書館で出来るだけ類似図書を調べた上で以下の4冊を購入しました。

編集:東京図書編集部
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様々な大学院の過去問を収録しており、幅広い数学の分野に対応しています。一応工学部向けを謳っていますが数学科でなければ理学部でも問題なく使用できると思います。

著:姫野 俊一
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古典力学・振動学・熱力学・電磁気学・光学等の幅広い分野の力学の実際の過去問を詳しく解説しています。式の導出も(比較的)丁寧だと思います。

監修:香取 眞理, 著:小林 奈央樹, 著:森山 修
¥2,475 (2023/03/28 11:00時点 | Amazon調べ)

古典力学・電磁気学・熱力学・量子力学・統計力学・物理数学の教科書兼問題集といった感じです。工学部系のひとにはかなり難しい感じがします。自分は古典力学と電磁気学の一部のみを使用しました。

著:林 義実, 著:小谷 泰介
¥2,860 (2023/03/28 19:10時点 | Amazon調べ)

編入試験用ですが、基礎の復習にはぴったりです。難しすぎる問題はまったくなくどれもよく考えれば理解できる程度です。解説は少しあっさりした感じがします。数学が苦手なら最初の一冊はこれがおすすめです。

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